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感情とは?「情動」は変えられるか。【表の道と裏の道】【象と象使い】

脳と心とEQ

感情とは?「情動」は変えられるか。【表の道と裏の道】【象と象使い】

この記事のまとめ

情動は勝手に生み出されますが、その反応を鈍くしたり、制御することができます。

感情と情動の違い

 

人は感情をもつ。感情は英語でemotionといい、分離・外への方向を表すe-と動きをあらわすmotionという言葉でできています。意識に関わらず、止めようとするしないに関わらず、情動は明るみに出てしまうものです。

つまるところ「刺激に対してどうしようもなく反応してしまう心のしくみ」を情動といいます情動はすぐに感じて、即決して、非論理的であっても動いてしまう反応です。情動はヒトが原始の時代を生きるか死ぬかの状況で発達させてきた、何らかの役割をもっている。『EQ こころの知能指数』ダニエル・ゴールマン p.24 からいくつか引用します。

◎怒りを感じると、血液は両手に集まる。武器を握ったり敵に殴りかかったりするための準備 だ。心拍数が上がり、アドレナリンなどのホルモンが一気に増加して、激しい動作に必要なエネ ルギーを作り出す。

◎愛情ややさしい気持ちや性的な満足感には、副交感神経系を覚醒させる働きがある。恐怖や 怒りの情動がもたらす「攻撃するか逃避するか」の構えとは正反対の生理学的変化だ。このよう な変化は「リラクセーション反応」と呼ばれ、穏やかで満ちたりた全身状態を作りだす。こういう状態のときは、他人との協調も容易になる。

怒りや優しさを感じるのは、どんな状況か、というのもひとりひとり、実は違う。全然怒りを感じないように「仕組みを作った」ら、怒りは感じにくいし、遺伝的に怒りを感じやすい人もいる。

◎悲しみがもたらす生理学的変化に見しい人の死や深い失望など心の大きな痛手に適応するのに有効だ。悲しみを感じたとき、人間の活動意欲(とくに楽しい活動に対する意欲)やエネル ギーは低下する。その状態がだんだんひどくなってうつ状態になると、からだの代謝機能まで低 下する。このような内に引きこもった状態は、喪失や挫折を気のすむまで嘆き、それが人生に たらす影響の重さをはかる時間を与えてくれる。そしてやがてエネルギーが回復し、立ち直って いく。原始時代、エネルギーの低下は悲しみで力を落としたヒトを安全なすみかの近くに止めお く効用があったのかもしれない。

何を悲しむか、悲しみの程度もひとりひとり違う。もちろん、遺伝的に悲しみやすい人もいます(日本人)。


ところで情動と感情はどう違うのでしょうか。

ある人は「一時的」「急激」「身体の変化を伴う」ことが情動だといいます。

言葉の世界は不思議で、「感情」も「情動」も同じといっていいかもしれないと私はおもっています。

ただ、英語でもemotionとfeelingが違うように、違いは確かにあるのですが。

漢字だけを見ると「感じられる情」と「動かそうとする情」の違いがあるでしょう。

あえて区別するなら、感情は受動的で、情動は能動的な心のエネルギーといえるでしょうか。

怒りは情動、不安は感情、と区別して何か便利なことがあれば、いいのですが・・・

情動は環境に作用される

目の前に○○があったらついつい…ということは子どもでも大人でもあるだろう。それは情動がなせる技です。「ついつい」起きてしまう状況をなくすために、「新皮質」の力で、あらかじめ環境をつくりなおすことができます。つまり情動はコントロールできます。多くの場合、私たちは情動をコントロールされ、消費行動に走らされています。

環境を変えるというのは、適切な行動を取りやすくし、不適切な行動をとりにくくするということだ。実にシンプルだ。たとえば、アマゾンのワンクリック注文について考えて欲しい。電話をかける10分の1のてまで、新しい本屋DVDが変える。これこそ瞬時の満足だ。アマゾンおウェブサイト・デザイナーは、望ましい行動(サイトでお金を使ってもらうこと)を少しラクにし、購入のハードルを人間尾限界まで下げた。そうすることで、何百万ドルもの増収を生み出したのだ。(『スイッチ!ー「変われない」を変える方法』p.246)

塾に通う環境を変えるために、というのはよくある話だ。ある意味、「勉強以外にすることがない」とか「仲間が勉強してるっぽいから自分もやらんなんとおもえてしまう」とか。余分な刺激がない。

自分自身を行動を変えるときは、自分にセルフコントロールを課すよりも、環境を変える方がかならずうまくいくのだ。たとえば、第1章のポップコーン実験を行なったブライアン・ワンシンクは、ダイエット者たちから絶大な支持を受けている。ダイエットをする人々は「食器類のサイズを制限せよ。小さな皿、ボウル、コップをつかいなさい」という彼の基本アドバイスを忠実に守っているのだ。大きな皿を使うと、食べ物を皿いっぱいに盛り付けなければならないという義務感が生まれることをワンシンクは知っている。(『スイッチ!ー「変われない」を変える方法』p.258)

だがそれが身についているかどうかは・・・・

情動は、強いけど。表の道(前頭葉)でコントロールできる。

人間は「表の道」「象使い」を使って情動をコントロールするチカラをもっています。

ヒトがでてくる過程で情動を制御する働きをもつようになった脳の部分は新皮質と呼ばれている。新皮質は、情動を再評価し、「果たしてそれでいいのかい?」という問いを立てる機能をもっている。「心が疲労する」というとき、この新皮質の「象使い」が疲れてしまうことを意味します。

私たちの知性は、根本的に異質な二通りの認識モードが作用しあって成り立っている。「考える知性」のほうは、おなじみの認識モードだ。事態をきちんと把握し、熟慮含味し、思慮分別を つけるのは、「考える知性」だ。しかし、頭のなかにはもうひとつ別の認識モードがある。衝撃 的で、パワフルで、ときに非論理的な命令を出すこともある「感じる知性」だ。(『EQ こころの知能指数』ダニエル・ゴールマン p.27)

これは『スイッチ!』の著者チップ・ハースとハン・ダースが「象」と「象使い」と呼んでいるものが「感じる知性」と「考える知性」にあたる。

脳のなかで最も古い部分は脊髄の上端をとり巻く形をした脳幹で、ひととおりの神経系をもつ生物種にはすべて今日つに備わっている。脳幹は呼吸ウヤ代謝など生命維持の基本に関わる昨日を調節し、またあらかじめ決まっている反応や動作をコントロールしている。この原始的な脳は、 考えたり学習したりする機能を持たない。むしろ生体を維持し命を守るのに必要な機能をあらか じめ決められたプログラムに従って調節するのが、脳幹の役割だ。爬虫類の時代には、この脳が 主役だった。ヘビがシュッシュッと音をたてて相手を威嚇するのは、脳幹の命令だ。

脳の最も原始的な部分である脳幹の上にやがて情動を支配する部分が発生し、さらに何百万年 という時間を経て、その上に思考する脳すなわち大脳新皮質が発達した。脳のいちばん外側を覆 う、皺や溝が入りくんだ部分だ。思考する脳が情動の脳の上に建て増しされたという事実を見る だけで、思考と情動の力関係がわかる。思考する脳が生まれるずっと前から、情動の脳は存在し ていたのだ。 (『EQ こころの知能指数』ダニエル・ゴールマン p.30)

「象」は脳のどの部分なのか?と聞かれたら。「大脳辺縁系」と答えて、間違い、にはならないようです。

原始哺乳類の登場とともに、情動を支配する脳に大きな進化が起こった。新しい脳は脳幹をとり巻くドーナツのように発達し、下のほうに脳幹の先端がはいりこんだ格好になっている。脳幹 の周囲を縁どる形状から、この脳を「大脳辺縁系」と呼ぶ。大脳辺縁系によって、脳は独自の感 情機能を持つようになった。強い願望や怒りで頭がいっぱいのとき、恋に目がくらんでいると き、恐れおののいて後ずさりするとき、行動を支配しているのは大脳辺縁系だ。(『EQ こころの知能指数』ダニエル・ゴールマン p.30)

ストレスで情動が乱れたら

ストレスは、外から受ける刺激です。刺激に対して心や体が「反応するやりかた」が大切なのです。情動は刺激を受けたときに真っ先に「反応する」場所です。

人間は、この素早く劇的な「反応」に対して一歩引いて、新皮質をつかうことができます。が、情動は強いし、新皮質は事が複雑すぎるとパンクします(「象使い」は疲れるのです)。かつてはそれほど複雑でなかったが、現代はあまりにも多様な刺激に溢れています。

あれがいいこれがいい、こうしないとああしないと、ああしたいこうしたい、こうしたらああでああしたらこうで、、、と考えていたら、新皮質はストレスに対処できませんね。ぐったりしてしまいます。

そういう時は、休んでください。

それが、現代を生きる一つの知恵です。

爬虫類からアカゲザル、そして人間へと系統発生図をのぼっていくにつれて、大脳新皮質は大 きくなっていく。それとともに、脳の神経回路の結びつきも幾何級数的に増加していく。脳の神 経結合が多ければ多いほど、生体が選択しうる反応の種類も多くなる。大脳新皮質の存在によっ て、たとえば自分自身の感情について何か感じるというように、人間の感情の働きは一層微妙で 複雑なものになった。大脳新皮質と辺縁系の連絡は霊長類が最も稠密で、なかでも人間の脳は他 とは比較にならないほど発達している。だから、私たち人間はさまざまな感情に対して他のどの動物よりも多様で複雑な反応を示すのだ。恐怖を感じたとき、ウサギやアカゲザルがみせる反応 は一定のパターンに限られている。けれども高度に発達した大脳新皮質をもつ人間は、一一〇番 通報を含めて、実にさまざまな手をくりだして恐怖に対処する。こうした柔軟性は、社会システ ムが複雑化すればするほど必要不可欠になっていく。そして動物のなかで最も複雑な社会に生き ているのが人間、というわけだ。(『EQ こころの知能指数』ダニエル・ゴールマン p.32)

脳は疲れる。だからでしょうか。TVのCMとか、「法則」や「メソッド」の本が売れます。脳が「休みたい」といっているのです。

情動は生み出されますが、その反応を鈍くしたり、制御することができます。

脳が、新皮質が、「象使い」が、正しいときに、正しい方法で、「象」を御しているならば。

疲れていませんか?

もう前頭前野、脳の新しい部分は「いや、現代、やばいだろ。なんでこんなに仕事が多いの?」と疲れてしまっているような気がします。だからこそ「思考停止」「自己欺瞞」「考えない」「流される」「ケセラセラ」という態度がより適切、といえるのかもしれません。皮肉ですが。

扁桃核を子どもだとしたら、新皮質の前頭前野は大人です。大人が疲れて何も言えなくなってしまったら、どうなるでしょうか。「情動にどのように反応していいか」、誰も教えてくれない子どもは、「お守り」を自分で作れるでしょうか。

大人が大人らしくあるためには、大人として子どもと関わるには?少なからず、大人のストレスで子どもの扁桃核に「不健康な刺激」を与えるのだけは避けたいものです。

情動のしくみ【「裏の道」の動物的情動】

この記事のまとめ

原初的な情動は「裏の道」の「扁桃体」が作ります。

スイッチ!

『スイッチ!』では「象」と「象使い」と呼ばれているものです。

感情の伝染は、脳のいわゆる「裏の道」の働きだ。「裏の道」とは、無意識下で自動的に働く超高 速回路のことで、わたしたちの行動の大部分、とくに感情にかかわる部分は、「裏の道」を経由する 広範な神経ネットワークによって導かれていると思われる。わたしたちが魅力的な顔に心を奪われた り、言葉の端に皮肉を感じとったりできるのは、「裏の道」の働きのおかげだ。

対照的に、「表の道」は、理路整然と段階を踏んで意識的に働く。「表の道」の働きは本人も意識し ており、ある程度はコントロールもできる。魅力的な顔の持ち主にアプローチしようとするとき、あるいは皮肉な言葉に対する辛辣なしっぺ返しの言葉を探すとき、主役を張るのは「表の道」だ。

「裏の道」は感情たっぷりの「ウェット」な経路、「表の道」は比較的冷静で合理的な「ドライ」な 経路、と見ることもできる。「裏の道」は生々しい感情を扱い、「表の道」は現状をよく理解し考慮し た結果を扱う。「裏の道」の働きによって人間は即座に他者に同情することができ、一方、「表の道」 の働きによって自分が抱いている感情について考えることができる。通常、「裏の道」と「表の道」 はぴったり噛みあって働く。人間の社会生活は、この二つの経路の連携によって成り立っている(『SQ 生きかたの知能指数』ダニエル ゴールマン p.32)

情動の中枢、扁桃体(裏の道)

「裏の道」は脳の古い部分、扁桃核という場所が受け持っています。この脳は新皮質よりも古いものであり、呼吸や反射に近い「強さ」をもっている。「無意識」といってもいいくらいふつふつと、ふと湧き上がってきて、時として本人が感じることができない(ついつい怒ってしまう、ついつい悩んでしまう、ついつい、笑ってしまう)。

扁桃核は、愛情だけでなくすべての情動を握っている。扁桃核の働きを失った動物は恐怖や怒 りを感じなくなり、競争心や協調性を失い、群れの中における自分の地位もわからなくなってし まう。情動が鈍化し、あるいは消失してしまうのだ。涙は人間だけが見せる感情のしるしだが、 涙が出るのも扁桃核とその近くにある帯状回の働きによる。肩を抱かれ背中をやさしくなでても らうと、脳のこの部分が静まり、涙が止まる。扁桃核がなくなれば、涙をだれかに慰めてもらう 必要もなくなってしまうわけだ。(『EQ こころの知能指数』ダニエル・ゴールマン p.37)

扁桃核は昔、ヒトが動物に食べられてしまう危険な時代に役に立った。敵はすぐそこにいる。扁桃核は「すぐに」行動するためのエネルギーをつくる場所、といってもいい。「考えてる場合か!早く逃げろ!もしくは戦え!」という場所だ。

扁桃核は、脳という組織の警備係のようなものだ。セキュリティ・システムの赤ランプが点灯 したらすぐに消防署や警察や隣家に非常通報ができるようオペレーターが待ちかまえている、と いうわけだ。

たとえば「恐怖」の警報が鳴ったとすると、扁桃核はただちに脳の主要各部に緊急事態を知ら せ、同時に戦ったり逃げたりするのに必要なホルモンの分泌を命じ、運動をつかさどる部分を覚 醒させ、心臓血管系や筋肉や消化管の働きを活発化させる。扁桃核から出ている別の神経回路が 緊急事態に対応しようとしてノルエピネフリンというホルモンの分泌を促すため、脳は興奮状態 になり、感覚は鋭敏になる。扁桃核からは、脳幹にも信号が送られる。その結果、表情は恐怖に 凍りつき、筋肉はとりあえず必要のない動きを中断し、心臓の拍動は速くなり、血圧は上昇し、呼吸数は少なくなる。他の器官は恐怖の対象に注意を集中し、必要に応じて筋肉を動かせるよう 準備する。大脳新皮質は思考を一時中断して過去の記憶をめくり、目の前の非常事態に関連する 知識を引き出そうとする。(『EQ こころの知能指数』ダニエル・ゴールマン p.39)

そしてこの反応はほとんど「勝手に」起きるため、新皮質が働いて「あれ、今、怒っているな」といったことは少し後になってから気がつくしかない。進化の過程でより高度な判断を司る新皮質よりも「外の情報」が早く到達する。扁桃核に送られた信号は視床を通じて新皮質に送られる。だからストレスで新皮質がうまくはたらなかないと、情動の力に圧倒されてしまう。

「解剖学的に見れば、情動は新皮質の世話にならなくても機能できます。情動の反応や記憶に は、意識や認知とはまったく無関係に形成されるものもあるのです」と、ルドゥーは語っている。扁桃核には私たちが日常自分でも気づかないうちに示すような情動反応のレパートリーが記 憶されている。「気づかない」のは、視床から扁桃核につながる近道が大脳新皮質を完全に迂回 しているからだ。(『EQ こころの知能指数』ダニエル・ゴールマン p.41)

仏教でいうところの「反応しない」「座禅」「縁起」は情動にまつわる脳の仕組みを理解して、新皮質の働きを強めるための振る舞い、考え方である。

記憶と情動

扁桃核が無意識に反応する情動の司令部であるとしたら、海馬という場所は与えられた刺激を記憶と結びつける解析部だ。扁桃体に「あ、今、これ、こういう状況です」ということを無意識のレベルでパーっとやってしまう。「生理的に無理」とか「なんかわかんないけど嫌」もしくは「好き」というのはこの海馬が無意識に扁桃体の判断材料を提供していることになる。だが解釈といっても、新皮質ほど複雑にはできない。海馬は、簡単に、単純に、そして素早く状況を解析する

自分でも気づかないうちに対象に好悪の感情を抱くのは、扁桃核にたくわえられた情動の記憶 のせいだ。これまで大脳辺縁系で最も重要な機能をもつと考えられてきた海馬の役割は、ルドゥ ーをはじめとする神経科学者による研究の結果、情動反応よりむしろ知覚したパターンの記憶や 解釈に重点があることがわかってきた。海馬にインプットされている情報は、状況あるいは文脈 に関する詳しい記憶だ。これは、ものごとに情動的な意味をもたせるうえで欠くことのできない 情報だ。たとえば、動物園で見るクマと自宅の裏庭にあらわれたクマの意味のちがいがわかるの は、海馬の働きだ。

海馬が事実を記憶するのに対して、扁桃核は事実に付随する情動を記憶する。たとえば、片側 一車線の道路で追い越しをかけて危うく対向車と正面衝突しそうになったとしよう。海馬は、そ の時どの道路を走っていたか、誰が車に乗っていたか、相手の車はどんな種類だったか、といっ たさまざまな事実を記憶する。しかし、その後同じような状況で追い越しをかけようとするたび に不安になるのは、扁桃核の働きだ。ルドゥーは、次のように説明している。「目の前の人間が 自分のいとこだと認識できるのは、海馬の働きです。でも、イヤなヤツに出会っちゃったなあと 思うのは、扁桃核の働きです」。(『EQ こころの知能指数』ダニエル・ゴールマン p.43)

昔、何処かの国の人が大切な行事か何かの出来事を記録するのに、小さい子を川に落とした。という話を聞いたことがある。扁桃核が興奮すればするほど、海馬に「記憶」されるからだ。PTSDも同様のしくみで引き起こされる。

逆に、幸せの記憶をたくさん刻んでいれば、海馬は困難な状況でも「解釈」によって扁桃体に「ネガティブな状況報告」はしないだろう。気質はこのようにして、経験を通じてつくられていく。

複雑な感情は新皮質を経由する【「表の道」の人間的情動】

この記事のまとめ

複雑な情動は「表の道」である「前頭葉」が担当します。

じわじわと、ふつふつと、思いを巡らせながら、情動をはっきりと意識することがあります。

妬みや嫉妬、プライドやら何やら、動物にはない情動を感じる時、情動に新皮質の前頭葉(詳しくいうと眼窩前頭皮質)がからんでいます。

怒りにも種類がある。危険な運転をしたドライバーに対してカッとするのは、おもに扁桃核から発する怒り。一方、情動の神経回路の反対側にある新皮質が煽る怒りは、冷徹な復讐心あるい は不公平や不正義に対する憤りのような計算された怒りだ。この種の怒りは、ベンジャミン・フ ランクリンが指摘したような「理由のある」怒りである場合が多いようだ。(『EQ こころの知能指数』ダニエル・ゴールマン p.98)

相反する感情を同時に抱いたり、複雑な感情を感じるようになるのは、2歳くらいからだったとおもう(すみません不正確で)。兄弟が生まれて「嫉妬」ができる年齢は、もっと低いかもしれない。

 

複雑、柔軟で遅い前頭前野

脳の場所を表す前頭前野という言葉は、前頭葉、と呼ばれることもある。ストレスで真っ先にダメージを受けるのがこの部分であるのは、扁桃核の情動反応を再評価し、適切な反応をとるように修正をかけるいわば「大人の脳」にあたるからだろう。進化的にも、ごくごく最近発達した、ヒトの特徴を表す脳の場所です

通常の場合、情動反応ははじめから前頭前野が支配している。前にも書いたとおり、視床から 出ていく知覚情報は大部分が大脳新皮質のさまざまな感覚野へ送られて認知される。認知した情 報にもとづいて反応を決めるのは、情動反応や行動を計画し命令する役割を担う前頭前野だ。大脳新皮質を構成する何層もの神経回路が知覚情報を受け取り、分析し、理解して前頭前野へ送り こみ、そこで反応をまとめる。その過程で情動反応が必要と判断された場合には、前頭前野が扁 桃核など脳のなかで情動をつかさどる部分を指揮して情動反応を起こす。 「緊急時以外は、私たちの脳はこのようなプロセスで分別をそなえた情動反応を見せる。情動が 起こると、前頭前野は瞬時に損得のバランスを計算して、無数の選択肢のなかから最適なものを選ぶ。動物ならば、攻撃すべきか逃避すべきかという判断。人間の場合はそれに加えて、相手を なだめようか、説得しようか、同情をひこうか、邪魔してやろうか、罪の意識に訴えてみよう か、泣きを入れようか、虚勢をはろうか、馬鹿にしてやろうか、等いろいろある

大脳新皮質の反応は、神経回路の数が多いぶんだけ扁桃核によるハイジャック反応よりも時間 がかかる。半面、思考が情動に勝っているぶん思慮分別がある。(『EQ こころの知能指数』ダニエル・ゴールマン p.50)

現代社会は複雑な判断、思考が必要とされる場面が多くなった。多くの他者の感情が刺激によって揺れ動き、不安定であることに呼応して、考えられる「最適解」を出すのは一苦労でしょう。選ぼうとして頭がパニックになってしまう人もいるとおもいます。それはTVで流れてくる商品からはじまりインターネット上の情報など。

 

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