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【SQ】自分を生きる【遺伝子と踊る】

この記事のまとめ

「命」の力を信じて、「命」と踊りませんか。

自分を助ける力を、自分はもっている

ただ、それを使いさえすればいい。「命」は力を持っている。

テンプル・グランディンは、子供のころに自閉症と診断された。彼女自身の話によれば、学校では 他の児童たちから「テープレコーダー」と呼ばれていたという。当時のテンプルは、すべての会話で 同じフレーズをくりかえすばかりで、しかも、彼女が興味を示す話題はほんの二、三種類しかなか った。 – テンプルは他の子供のところへ行って、「わたし、ナンタスケット・パークへ行ったの。ローター に乗って、からだが壁に押しつけられて、すごく楽しかった」と、お得意のフレーズを言い、「あん たも、あれ、好きだった?」と聞くのである。相手の子が自分もローターに乗って楽しかったと答えると、グランディンは相手の答えを一言ずつ おうむ返しに真似て、それを何度も何度もくりかえす――まるでエンドレスのテープのように。 思春期を迎えるころには、「不安が津波のように押し寄せてきて、片時も止むことがなかった」と いう。これも自閉症の症状のひとつだ。このとき、テンプルを救ったのは、動物が周囲の世界をどう 知覚しているか――自閉症の人の過敏な状態によく似ている、と、テンプルは言う――を洞察できる、 という彼女特有の鋭い感覚だった。

伯母が所有するアリゾナ州の観光牧場を訪ねたとき、テンプルは、近くの牧場で牛の群れが「スク イーズ・シュート」に追いこまれるところを見た。スクイーズ・シュートというのは鉄柵がV字型に 作ってあって、牛がその中を進んでいくにつれてだんだん狭くなり、V字の先端で空気圧をかけて牛を動かないように押さえつけたうえで獣医が診察などをするための装置のことだ。牛は押さえつけられて恐がるどころか、むしろおとなしくなる。ぎゅっと圧力をかけられると落ち 着くのだ、と、テンプルにはわかった赤ちゃんがおくるみでキュッとくるまれると泣きやむのと 同じだ。テンプルは、自分にもスクイーズ・シュートのようなものがあったらいいのに、と思った。

高校の教師の助けを借りて、テンプルは人間用のスクイーズ・シュートを作った。人間が四つん這 いでちょうどはいれる大きさの木枠を作り、コンプレッサーで空気圧をかけられるようにしたのだ。 これは効果があった。今日に至るまで、心を落ち着ける必要を感じるたびに、テンプルはこの装置を 使っている。(『SQ 生きかたの知能指数』ダニエル ゴールマン p.211)

脳、遺伝子と踊る

生まれ持ったものは仕方がない。ヒトがまだ他の動物に食べられてしまっていたころ、動物を殺して生きなければならなかった頃、男性が動物に「共感」していたらヒトは生きていけなかっただろう。おかげで、「共感能力がない上司」が社会にいるのも当然だと、諦めることもできるのだろう(そのままでいいとはいわないが)。

テンプル・グランディンは、自閉症という診断も含めて、いろいろな面でふつうとは違っている。 自閉症を発症する割合としては、四対一で男児のほうが女児より多い。アスペルガー症候群と診断さ れる割合は、一○対一で男児のほうが女児より圧倒的に多い。サイモン・バロン=コーエンは、こう した障害をもつ人々は極端な「男性型」の脳をもっている、という大胆な説を提出している。

バロン=コーエン博士によれば、超男性型の脳はマインドサイトがまったく働かないという。共感 にかかわる神経回路の発達が不全なのだ。しかし、そのかわりに、複雑な数学問題をコンピュータに 負けないスピードで解くことができる、というような信じがたい天才的知能が備わっている。超男性 型の脳は、「心の目が見えない」けれども、株式市場でもソフトウエアでも量子物理学でもシステム を理解することにかけては天才なのである。

反対に、超「女性型」の脳は、他者に共感する能力、他者の思考や感情を理解する能力、などに非 常に優れている。こうした傾向の知性をもつ人は、教職やカウンセリングなどに抜群の才能を発揮する。心理療法士になれば、患者の内的世界に深く共感し情動チューニングできる。しかし、超女性型 の脳は、二股に分かれた道で正しい方角を選ぶことから理論物理学の学習に至るまで、システム化が 非常に苦手だ。サイモン=コーエンの言葉を借りるならば、「システムが見えない」のである。 (『SQ 生きかたの知能指数』ダニエル ゴールマン p.212)

遺伝子にドラマを

自分の「命」は自分が責任を持って燃やす。誰かに与えられたイメージを生きては、「命」は失われてしまう。

はさておき、テンプル・グランディンの場合は、疑いなく、バロン=コーエンの言う 「男性型」の脳をもっていると考えられる。ひとつの根拠は、彼女が動物科学の分野で三○○以上の 学術論文を発表していることだ。グランディンは動物行動学の専門家であり、全米の家畜取扱業者の 半数が採用している施設や装置の考案者だ。彼女が考案した家畜の誘導装置は、動物に対する並はず れた洞察力にもとづいて、牛たちをいかに人道的に扱うかという観点から設計されている。特殊な才 能のおかげで、グランディンは世界じゅうの家畜の飼育環境改善をめざす第一人者として活躍してい
る。 (『SQ 生きかたの知能指数』ダニエル ゴールマン p.214)

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