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EQで紛争(冷戦)を解決する【家庭編】【会社編】

EQで紛争(冷戦)を解決する【家庭編】【会社編】

 

この記事のまとめ

大切な人が、いますか。

 

EQ こころの知能指数

 

 

 

 

 

『EQ こころの知能指数』ダニエル・ゴールマン

家族のいざこざ

結婚生活をうまくやっていくためには、夫婦のあいだで意見が合わない特定の問題――子育 て、セックス、家計、家事など――ばかりに集中せず、夫婦に共通のEQを養って問題をかしこ く解決する工夫をすることだ。わずかのEQ――自分の(そして相手の)感情を静める能力、共 感する能力、相手の話をしっかりと聞く能力――を身につけるだけでも意見の対立をうまく収められるようになる。そうなれば、夫と妻のあいだで「健全な意見の不一致」が可能になる。「上手なけんか」は結婚生活を豊かにし、結婚生活をおびやかす有害な思考を克服する機会になる。

もちろん、情動の習慣は一夜で変えられるものではない。最小限、いつも気をつけて忍耐強く努力しなければならない。変えられるかどうかは、やる気しだいだ。結婚生活で問題が持ちあ がったときに顔を出す情動反応の大多数は、子供のころに親しい人間関係から習いおぼえたり親 に教えこまれたりして自分の中にしっかり染みついている反応だ。したがって、親のようになる まいと心に誓っても、やはり、冷淡にされたと感じて過剰に腹を立てたり対立の徴候を察したと たん殻に閉じこもったりといった習慣はどこかで顔を出しやすい。(『EQ こころの知能指数』ダニエル・ゴールマン p.220)

怒りや悲しみを感じたら

面と向かって情動的になっていると、前頭葉が働かずにただ「圧倒されてて」しまうと、望ましいプロセスが生まれることはないでしょう。そんなとき、「ストップ」をかけることが大切です。

やる気のある人は、夫婦間で問題が持ちあがったとき、五分おきぐらいに脈拍数を数えてみる といいだろう。耳たぶから数センチほど下の頸動脈に軽く指を当てると脈に触れることができる (エアロビクスをやっている人ならば、よくわかるだろう)。十五秒間数えて四倍すれば、一分間 の脈拍数が出る。ふだんの脈拍数を測って、それをおぼえておく。脈拍が一分あたり十以上上昇 したら、情動の氾濫が始まったしるしだ。そうなったら口論はいったん休憩にして、再開するまでに二十分間ほど時間をおく。五分間も休憩すれば充分と思うかもしれないが、からだの生理機 能がもとに戻るには思ったより時間がかかる。第五章でふれたように、怒りが残っていると次の 怒りが増幅されてしまう。休憩時間を長くとったほうが、からだに興奮から回復する時間を充分 与えることができる。

夫婦げんかをしながら脈拍を数えるなんてやりにくいと思う人もいるだろう。そういう場合 は、あらかじめ夫婦のどちらかが「氾濫」の徴候を感じた時点でけんかを一時中止する約束をし ておけばよい。一時中止のあいだに、リラクセーション・テクニックやエアロビクス(あるいは 第五章で紹介した他の方法)など情動のハイジャック状態から脱出するのに有効な方法を試して みるのがいいだろう。(『EQ こころの知能指数』ダニエル・ゴールマン p.221)

言葉を使って共感する

前頭葉を使って、共感する回路を開くための技術がある。言葉の力だ。「裏の道」を使った共感はもちろんその基礎にあるのだが。

落ち着いて、話す、自分の心を手離して、相手に伝えるという技術は、子育てにも使える。

夫婦のあいだで心を開いて話し合うための最大の秘訣は、話の範囲を当面の問題点だけに絞 り、人格攻撃にエスカレートさせないことだ。心理学者で効果的なコミュニケーション・プログ ラムの生みの親でもあるハイム・ジノットは、苦情を述べる際のいちばん上手な形式は「XYZ」だと勧めている。「あなたがXしたので、私はYな気持ちになった。Zしてくれればよかっ たのに」というのだ。たとえば、夫婦げんかでよく聞くセリフのように「あなたって思いやりの ない人ね。自分勝手な大馬鹿者だわ」と言うのでなく、「あなたが夕食の約束に遅れるという電 話をくれなかったので、私は大切に思われていない気がして腹が立った。遅くなるなら電話で知 らせてくれればよかったのに」と言えばいい。つまり、心を開いたコミュニケーションには皮肉 や脅しや軽蔑の言葉がないのだ。言いわけ、責任のがれ、非難による反撃など自己弁護の言葉も ない。ここでもまた、共感が威力を発揮する。

最後にひとこと。人生のあらゆる場面と同じく、結婚生活においても尊敬と愛情は敵意をやわ らげる。けんかを収める非常に有効な方法のひとつは、「僕も君の視点に立って見ることができ 憎るよ」、「僕自身は同じ考えではないけれど、君の考えも正しいかもしれないね」と相手に伝える

ことだ。もうひとつは、自分のほうがまちがっていたとわかったら責任を認め、謝ることだ。最 悪の場合でも、相手の立場を認めてあげれば話を聞いていることは伝わるし、相手の主張に内容 的には賛成できなくても「君が気分を害するのはわかるよ」と相手が訴えている感情を認知する ことはできる。口論していないときは、相手について心からすばらしいと思う点をほめる行為が 相手を認めることになる。相手を認めることは相手の心をなごませることであり、明るい気分で 情緒的に豊かな結婚生活を送ることでもある。(『EQ こころの知能指数』ダニエル・ゴールマン p.225)

会社でも同じ

この記事のまとめ

人間関係は、「心」の技術です。

作業作業、ただただ「あれしろこれしろ」では伝わらない。ただケナサれる、殴られる、人間疎外な現場が多いような気がします。心を伝えることが、本当に大切なのですが。

管理職が上手に批判を伝えれば、部下に対する最高のメッセージとなる。たとえば会議の席で ソフトウエア・エンジニアの誤解を招いた部長は、次のように気持ちを伝えればよかったのだ。 「この段階で最大の問題点は、きみの案では時間がかかりすぎてコストが高くなってしまうこと だ。もう少し考えてみてくれないか。とくにソフトウエア開発のデザイン仕様で、同じ作業をも っと手早くできる方法がないかどうか」。こんなふうに言えば、破壊的な批判とは正反対のイン パクトが期待できる。無力感や怒りや反抗心は生まれず、改善への見通しやそのための具体的な 方向が見えてくる。

部下が何をどう実行したか、何をどう実行できるか、に注目するのが上手な批判だ。仕事の出 来が悪かったとしても、そこに当人の性格的要因を読み込むようなことをしてはいけない。ラー ソンは、次のように指摘している。「相手を馬鹿呼ばわりや無能呼ばわりするような人格攻撃で は批判の要点が伝わりません。相手を防御態勢に追い込んでしまっては、いくら改善策をさずけ ようとしても相手の頭にはいっていきません」。要は、夫婦のあいだで苦情を伝えあう場合と同 じなのだ。

動機づけの点から見ても、失敗の原因が自分自身の改善不能な欠点にあると思えば、改善の希 望も士気もなくなってしまう。うまくいかないのは状況のせいだ、状況を変えるのは不可能では ない、と思えば楽観が生まれてくる。(『EQ こころの知能指数』ダニエル・ゴールマン p.235)

言葉の使い方

もちろん、「上司」が破壊的な人物であれば、こうしたやりとりがどこまで通用するか、わかりませんが。家族にも同じようなアプローチができます。

具体的に言うこと

問題がはっきり表われている場面をとらえて批判すること。改善を要する問 題点がよく見えるケース、あるいは特定部分に関する処理能力の欠如がパターンとして表われて いる場面など。「何か」良くないと言われるだけでどこをどう変えればいいのかわからない状態 では、士気が低下する。具体的にどこが良くて、どこが悪くて、どうすれば改善できるかを指示 することが大切だ。遠まわしな言い方や間接的な表現はよくない。伝えるべき要点がぼけてしま う。夫婦のあいだで苦情を言うときの「XYZ」と同じだ。何が問題なのか、何が悪くて自分が どういう気持ちにさせられたか、どう改善してほしいか、相手にはっきりと伝えることが大切 だ。 具体的に、というのは批判する場合だけでなく褒める場合にも大切なポイントです。漠然とし た褒め言葉でも効果がないとは言いませんが、大きな効果はありません。それに、そこから何か 学ぶこともできません」と、レヴィンソンは指摘している。

解決策を示すこと

批判が有益なフィードバックとなるためには、問題処理の方向が示されてい なければならない。さもないと、批判された側に挫折感や士気の低下や動機の喪失が残るだけ だ。批判は、本人が気づかなかった可能性や選択肢に目を開かせる場合もあれば、対処を要する 欠点に気づかせるだけの場合もある。いずれにしても、そうした問題の処理方法について方向を 示す内容でなければならない。

直接伝えること

批判も賞賛も、面と向かって一対一で伝えるのが最も効果的だ。人を批判した り褒めたりするのが苦手な人はメモなどで間接的に意を伝えようとするが、これではコミュニケ ーションに生の息づかいがなくなり、受けとめるほうも反応したり質問したりする機会を与えら れないことになる。

気持ちを察すること

つまり共感すること、批判を受ける側に批判の内容や口調がどう伝わるか を察することだ。共感能力に欠ける管理職は相手をぺしゃんこにするような酷評をフィードバ クするケースが多い、とレヴィンソンが指摘している。そのような批判は破壊的な影響をもた す。これでは問題点が改善されるどころか、恨みつらみや自己弁護の言葉が感情的にはね返って きて、心の距離が遠くなるばかりだ。

レヴィンソンは、批判を受ける側にもいくつかアドバイスをしている。ひとつは、批判を自分 に対する個人攻撃と考えず、改善のための貴重な情報と受けとめること。もうひとつは、自己弁 護に走りたくなる気持ちを抑えて責任を取ること。感情的になりそうだと思ったら、あとで改め てミーティングの続きをさせてくれるよう頼み、いったん席をはずして批判の内容を咀嚼し冷静 さをとりもどす時間をもうける。さらに、批判を相手と自分の対立と見るのではなく、批判して くれた人と協力して問題解決にあたる機会と見ること。これらのアドバイスは、夫婦のあいだで 関係を決定的に悪化させないよう気をつけながら苦情を処理する際のアドバイスと呼応してい る。結婚生活も職場での時間も、結局は同じなのだ。 (『EQ こころの知能指数』ダニエル・ゴールマン p.236)

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