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【共感能力】心をおしはかる『“わたし”の発達』岩田純一

心をおしはかる共感能力『“わたし”の発達』岩田純一

 

この記事のまとめ

共感能力は6歳までに大部分、完成します。

“わたし”の発達―乳幼児が語る“わたし”の世界
“わたし”の発達―乳幼児が語る“わたし”の世界』岩田純一

生後6ヶ月の赤ちゃんでも、好ましい行動と好ましくない行動を見分けます。こんな実験をした人がいます。

坂を登っていく丸がある。それを邪魔する四角がある。それを助ける三角がある。あかちゃんが好意を示すのは、三角である。大人がダンベルから立方体を外そうとしているがはずれない映像を見せる。赤ちゃんに同じものを渡すと、外す。同じ動作を機械がしているものを見せてから同様にやっても、あかちゃんは立方体を外そうとしない。(『子どもは善悪をどのように理解するのか?』長谷川真里)

感情、とはいわないまでも、人の意図を読み取る力は、赤ちゃんにもあるのです。

 

1歳

まだ自己と他者がはっきり区別されていません。(といいつつも、ちゃっかりしている子もいます。自己の定義は難しいです

情動感染が起こりやすい時期です。

11から12ヶ月の子ども:友達が転んで泣くのを見た時、友達をじっとみつめ、なき始まる。口に親指を入れ、養育者の膝に自分の顔をうずめ、まるで自分自身が傷ついた時と同じような行動をする。(『よくわかる情動発達』p115)

13から14ヶ月の子ども:泣いている友達に援助を始める。泣いている友達を慰めるために、その友達の養育者ではなく、自分の養育者のところに連れて行く。(他者の内的状態(思考・感情・欲求)を自分と同じであると考えている)(『よくわかる情動発達』p115)

 

また、社会的参照の能力をみる「断崖実験」は養育者から情動をもらって「いいか」「わるいか」を体で感じているもののようにおもいます。

親戚のおじさんが、大声で笑い転げる猫のぬいぐるみを買ってきて、赤ちゃんに渡す。赤ちゃんは、奇妙なぬいぐるみにどう反応して良いか迷い、そばにいるお母さんの方を振り返る。お母さんが「面白いおもちゃをもらえてよかったね~」と笑顔で声をかける。赤ちゃんは安心してぬいぐるみで遊び始める。(ソースは視覚的断崖の装置を用いて、母親の示す表情を幼児が理解し、行動に現れるかを調査した。その結果、1歳の幼児でも母親の表情から感情を推定し、それに基づいて自らの行動を決定していることがわかった。)

2歳

過去に遡って自分の情動がなぜ起きたか、原因を説明できる時期です。

2歳になると、悲しいふりをしている母親に自分の毛布を手渡し、母親の気を紛らわそうとすることができます。(『子どもの遊びは魔法の授業』p.299)

1歳の終わりから2歳にかけて:自己と他者の内的状態が違っていることに気づく。泣いている友達を慰めるために、自分のぬいぐるみを持って行く。それでも泣き止まなければ、隣の部屋にある友達のぬいぐるみを取りに行く。他者の欲求と事故の欲求の違いを理解し、それに基づいた援助行動を行う。(『よくわかる情動発達』p115)

人間関係をよくする試み

一歳半ごろになると、子供は他者を慰める行動をするようになります。さらに2歳から3歳になると、他者の情動状態を変化させる言葉を使います。店で泣いている子どもを見つけた満2歳の女の子が母親に「子供が泣いているよ。キスしてあげて」というように、他者の助けを借りることもあれば、けんかをしている両親に対して満二歳の女の子が「怒らないで」と仲裁に入るように、直接自分が関わることもあります。二歳ごろから、慰める以外にも、からかったり、冗談を言うようになるのも、他者の情動を理解し、それを自分が操作することで、自分にとって楽しく心地よい関係を作ることを目的としています。このように、子供が自分や他者の情動を理解し、言葉にすることによって、自らが積極的に人との関係を変える主体となりうるのです。(『よくわかる情動発達』p.87)

他者の目線を感じる

2歳も近くになる頃には、子どもは大人からの反応を予期し始めるようになってくる。自分が成功した時には大人からのポジティブな反応を期待して求めるかのような反応が見られ、他方うまくいかず失敗した時には、大人からのネガティブな反応を避けようとするような反応(顔をそむける、失敗を隠すなど)がみられるようになるのである。(略)まだ内なる他者(もう一人の私)とはなっていないが、外的な他者の目を介しながら自己を対象として評価的にながめようとする様子をうかがうことができる。(『〈わたし〉の発達ー乳児が語る〈わたし〉の世界』岩田純一 p.28)

3歳も後半になると、子供は保育者の期待や評価に敏感に反応するようになる。そして、保育者の指し示す規範や価値観を積極的にじぶんの内に取り入れ、それを指針として、あるべき自己を形成していこうとするようになる。保育者から認められたりほめられたことを進んで自ら行おうとするようにもなってくる。大人からの期待や評価に沿って自己の行動をとろうとするようになるのである。(『〈わたし〉の発達ー乳児が語る〈わたし〉の世界』岩田純一 p.37)

3歳

3歳から4歳以降になると、かんしゃくや強い泣きは、それ以前と比べると減っていきます。幼稚園などの集団の場に入った子供は、仲間との遊びの中で、言葉による情動調整を発達させていきます。また、記憶力やイメージを扱う力が成熟することで、何をして良いのか、いけないのかの基準が内面化され、養育者が目の前にいなくても、自分の行動を調整できるようになります。さらにこの頃には、相手の気持ちを考えて自分の情動を調節することもできるようになってきます。例えば、魅力的ではないものをプレゼントされた時に、送り主がいない時には、がっかりした表情をするにも関わらず、送り主がいる時には、がっかりした情動を表さないこともできるのです。(『よくわかる情動発達』p.83)

4歳

時間の概念がしっかりすることで、過去、未来と

他者の視線

4歳は「マシュマロ実験」が行われる年齢です。

3歳になった頃は、じぶんありの目標を持ち始め、あくまで自己に忠実に遂行しようとする。(略)しかしながら3歳も後半から4歳頃になると、それまでのように自己の思惑だけに従って行動するだけではなくなる。保育者の期待や要望、評価などをも考慮に入れて、それを自分の行動の指針とするようになってくる。(略)「ほんとうは〜がほしい」「ほんとうは〜したい」けれど我慢する。「ほんとうほあ〜したくない」けれども辛抱してする、といった行動の意図的な自制が可能になってくる。(『〈わたし〉の発達ー乳児が語る〈わたし〉の世界』岩田純一 p.65)

誤信念課題というものがあります。

4歳はなぜこのような課題事態での達成にとって分岐的な年齢となるのであろうか。子どもがこの課題を達成するには、同じ状況が自他間においてまったく異なる仕方で表象化されることを理解し、それらの信念表象をメタ的に比較することが求められる。そのためにはじぶんの信念と同時に、他者の異なる信念を二重に表象化することが必要である。それによって「じぶんは今ある場所を知っているが、見ていない他者はなお元の場所にあると信じているはずである。したがって、その人は誤った場所を探すにちがいない」と推論できるのである。そもそも3歳児では、視覚経験と知識構造の関係を類推することが未だ難しいようである。(『〈わたし〉の発達ー乳児が語る〈わたし〉の世界』岩田純一 p.88)

5歳

規範の内在化

(母親や保育者)のまなざしや指示のもとに自己の行為を調整していこうとする。この頃、子どもが「〜してって言って」といちいち大人の指示や命令を仰いでから行為するといったエピソードがみられる。規範が十分に内在化されていないため、まだ外からの指示や命令を仰ぐことを求めるのである。(略)しかし5歳にもなると、その同じ行為を大人の指示や命令なしで自発的に行おうとするようになってくる。自己の行為の調整に必要であった外的な他者の眼差しや声が、5歳の頃にはしだいに内在化されてくるのである。(『〈わたし〉の発達ー乳児が語る〈わたし〉の世界』岩田純一 p.66)

二次的誤信念課題

誰かが別の人をどうおもっているかということを自覚できる。

二次的な誤信課題は、4歳では難しく20%ほどの正答しかみられないが、5、6歳では約半数が正しく推論できるようになる。この4〜6歳という頃には、感情の表示ルールの理解が発達してくる時期でもあるが、それら両者の理解能力の関連も見られている。(略)ホンネの感情の推測や、他者へ表示する表情選択とその理由づけは、2次的な誤信課題での成績と相関的な関係が見られたのである。このことは、他者が誤った信念をもっていると誤って信じている人の心的状態を概念的に理解する能力が、人はじぶんのホンネの感情をだせば、それをみた他者が抱くであろう印象を推論し、その上でそのような印象を抱かせず、別の好ましい印象を持たせるために感情を表示する、といった心的過程の理解と関連することを示唆しているのである。(『〈わたし〉の発達ー乳児が語る〈わたし〉の世界』岩田純一 p.93)

人物の特性(性格)を理解して行動を予測する。

幼児でも年長児の頃になると、他者の行動情報からその人の一般的な人格特性を認識し、その特性が関連すると思える場面に一般化して他者の行動を適切に予測できるようである。過去に利己的に振る舞った人は、以前に寛大に振る舞った人よりも、他の場面でも利己的に振る舞うことを予測するのである。(『〈わたし〉の発達ー乳児が語る〈わたし〉の世界』岩田純一 p.117)

(紙芝居の登場人物のキャラクターを掴み取り、何をするか予測するような)他者のポジティブとネガティブな特性を把握し、さらにその特性に基づいて新たな場面における他者の行動を予測するといった能力は、すくなくとも4歳の頃には見られるようになり、5歳児にかけてより明らかになっていくようである。(『〈わたし〉の発達ー乳児が語る〈わたし〉の世界』岩田純一 p.115)

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